第6章 猫のプライド。(2006.8.15記事)
またまた、小学校の頃の思い出が蘇る。
ボクは、6人兄弟(姉2人)の末っ子である。
5つ違いの3男の兄は成績優秀でガキ大将であったから、知恵も体力も敵わなかった。
悪戯でよくいじめられた。
あの頃は物が豊富じゃないかったから、分け合うとか共有するというのは当然のことであった。
例えば、母親から1つのリンゴを2人で分けて食べなさいともらうと、
『タカシ、こっちに来い。』と外に連れ出して、ポケットから工作用のナイフを取り出 して、2等分する。
『おっと、手元が狂うてしもうしもた。しかたンなか。これも天命じゃろ。』
カブキ役者のセリフのように大騒ぎしたあげく、大きいほうを自分のもので、小さいほうをボクにくれる。
晩御飯のときであった。
『タカシ! あれ、あれ何じゃろかい?』
指差して右を向かせたスキに、オカズの1切れを盗むのである。
ケンカじゃ負けるので、公儀に訴え叫ぶのであるがすでに後の祭りで、
『大きな声じゃ言えんバッテン、昼間の件義理と恩義があるやろうもん。堪忍せい。それとも、欲しかなら腹ン中あるけん、ホラ、撮れ!』
と腹を突き出して、理不尽なことをいう。
オゴゼの場合、頭をこずかれて拗ねてしまって、自分のベッドにもぐりこんでしまった。
夕食の時間になっても出てこない。
『オゴゼ! ご飯だよ。』
声をかけるたびに、ガサゴソと音はすれども姿を見せぬ。
宇治捨遺物語の中に、ある寺の坊さん達の餅つきの話がある。
その餅つきの最中にうたた寝をしてしまった小坊主が、起きるタイミングを逃して狸寝を しているのである。
餅が出来上がり声をかけられるが、1度で起きればバツが悪く、 2度目でおきればワザとらしく思われることを恐れ、3度目の声を待つのである。
『寝てるのを起こすのは、かわいそうだからよそう。』
ムシャ、ムシャと美味しそうに食べる音が聞こえてくる。
しばらく待つのだが、耐え切れなくなった小坊主は、自ら
『エイ!』と叫んで飛び起き、皆の爆笑を買うのである。
こんな故事に習い、ボクも意地悪に(ムシャ、ムシャ)と音を立てて食べながら、(猫のプライドと妥協は、どのあたりかな?)とニタリと笑ってしまった。
猫のプライド 2/2 完
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