第5章 猫のお面をかぶった猫 2/2 (2006.8.4記事)
こんな面白い遊びが檻の中の虎が恐くてやめられるものか。
郵便局員の出入り口は裏にあり、ボクを捕まえるにはそこで靴を履き、玄関まで回らなければならない。
その時間差を利用してボクは、逃げる。
(もう、よかろう)と思う頃を見計らって郵便局にもどると、お兄ちゃんは厳しい顔をして窓口に座っている。
どんな顔つきで入っていったのか覚えていないが、憎たらしい顔つきのガキであったろうと想像する。
ふたたび、トランポリンをはじめる。やめろ!と怒鳴られてもやめない。
イタチゴッコである。トランポリンが面白いのか、大人を怒らせて逃げるのが面白いのか解らないが、
そこが悪戯の本質だろう。
しかし、そこは大人である。
猫のように狡賢く隠れていて、ネズミを取り押さえるように3度目のボクを捕まえてしまった。
目から星の出るような痛いゲンコツを食らって、ボクは泣きながら家に帰った。
今でも、この辺りだったなと頭を触ると痛いような気がする。
オゴゼは、反省したのだろうか。
昨夜のことである。ボクが眠ったあとーどういう心境なのかーオゴゼが部屋中を駆け回り、作業机の筆立ては倒す、水入れをひっくり返すの大立ち回りをやりだしたのである。
最初は気が狂ったのではないがと驚き心配したのだが、どうやら悪戯だとわかり(生意気な奴だ。)と頭をコツンとどついてやった。
彼女は、情けない顔でスゴスゴと自分のベッドにもぐりこんだ。
(テメー、いままで猫をかぶっていたな。) 第五章 2/2 完
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