第8章 猫の夢ひねもすのたりのたりかな (2006.9.9記事)
故郷の海を、思い出した。
春の海 ひねもすのたり のたりかな (蕪村)
今日は、この気分である。
目の前に、故郷の海がひろがった。
左手に岬が長々と伸び、右手に大きな島があってU状の湾になっています。
U状の底は長い砂浜で、それが終わったところが陸と島の細い瀬戸の水道になっていて海流が流れ込んだり流れでたりしているのです。
長崎の外海に位置した半島の辺鄙なところにあり、東京の大学を卒業した新任の先生が、長崎市から3時間40分もかかるバスでボク等の中学に赴任して来て、初めての国語の時間に、訛のない日本語で
『ここは、陸の孤島ですね。』
といわれたことを覚えている。
浜に沿って民家が並び、家の後ろからすぐに段々畑が山頂まで重なっています。
その中腹の棚田に腰かけると、穏やかな白浜が見下ろせます。
目の高さに岬の突端と島の突端が90度の角度で広がり、それを水平線が結んでいます。
水平線の向こうは角力灘で、海賊船が密貿易で活躍した東シナ海につづいています。
小学生、中学生の頃は海賊ごっこで伝馬船をこいで遊んだ海です。
平家の落人の伝説も残っているし、隠れキリシタンが潜んでいたところもあります。
その水平線の真中辺りに、背の高い尖った島と平たい台形の島が寄り添うように浮かんでいます。
母子(はこしま)です。ところが、バスが岬の突端を曲がるところから見ると、母子島がなくなり天狗島というのが浮かんでいるのです。
ちょうど天狗のお面を真横から見た形をしています。ボクはどちらの島も好きだったのですが、母島と子島が重なって天狗島に成るということを中学になって始めて知りました。
ボクにとってこの感動は、「ガリレオが、地球はまわっている。」と叫んだくらい大きな発見でした。
そんな魅力的なボクの故郷が今でも好きです。
見る角度によって形が変わる。
偏見とか固定概念。人種、民族、戦争。
頑固な絵描きとのんきな猫。
故郷とリバーデール。
地球上のことは、鳥瞰図で眺めるみたいに考えりゃあ、なんてことないのになあ。
そんなものがグルグル回って、猫の目。 2/2
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