第8章 猫の夢ひねもすのたりのたりかな (2006.9.1記事)
昨夜から降り始めた雪が、朝起きてみると30センチほどに積もっています。
外の気温はマイナス10度に凍てついていて、ふだん騒々しいカケスも今日は姿を見せません。
空は雲1つなく晴れ上がり、ときどき風にあおられる雪の粉がキラキラひかります。
日当たりにいい窓辺で、オゴゼとボクは肘杖ついてただ眺めています。
まるで時間がとまったような静けさです。
暖房のよく効いた部屋の中は、春の陽気な日和のようでウトウトとしながら夢をみていた。
オゴゼに起こされて目をさますと、アパートの管理人が大きなスコップを担いできて中庭の小道の雪かきを始めたところです。
『暇だろう。運動不足だろう。手伝いに行けよ。』
オゴゼの目とシッポが、その善行をうながしている。
『雪の上も歩けないくせに、生意気なことをいうな。ボクは前回で懲りているのだ。』
先日の大雪のときは、面白そうだったので喜び勇んで手伝ったのであるが、水を含んだ砂と一緒で、きれいだとか面白いどころではない重労働なのであった。
次の日には筋肉痛で体のいたるところがギシギシ痛んだ。
ボクは、見かけに浮かれて踊るほどもう若くはないのだ。
ひと仕事して散歩に出ると、玄関のところに雪だるまが立っていた。
ドングリの目玉とにんじんの鼻と長い枯れ枝の腕。古い麦藁帽子を被り、真っ赤なマフラーを巻いたまったく奇妙でお洒落でユーモラスな雪だるまである。
『しまった。ボクも手伝えばよかった。』
オゴゼのいうとおり。
遊びも仕事も工夫次第だよな、楽しくなるのは。
散歩から帰ってきてみると、オゴぜがボクの作業机の中央にドテッと昼寝している。
夢をみている気配である。
『ハハア、たまにはのんびりしろ、と言うことかな?』
ボクも机の上に足を投げ出して、とりとめもなく瞑想。 1/2
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