第6章 猫のプライド 1/2 (2006.8.9)
ボクには、猫について語るだけの知識も経験も資格もない。
ただオゴゼと同居生活をしていると、猫というのはまんざら未確認生態動物でもないことが、少し解ってきた。
むしろ、ボクという人間のほうが、矛盾、打算、日和見主義で素直ではなく不摂生で仁に欠け、孝をなさず、誠なく、地球創世記の天と地が混沌としているようなつかみ所のない生物に思えてくる。
オゴゼは、姿勢の美しい猫である。
食事を待つとき、食べるとき、水を飲むときは、まるで哲学的な思想家のようだ。
しかし、昼寝、ごろ寝、うたた寝のときは、無防備、無遠慮、無作法、無恥、夢想にして自若泰然としていて、老荘思想を極めた仙人のようである。
そんな彼女が、最近ボクの3度の食事と晩酌につきあうようになった。
理由は、キャットフードより人間の手料理のほうが味がいいのだろうと察する。
それとも、ボクを親交信頼たりうる生物と認めたためだろうか?
いずれにしろ、ボクは彼女に同等の敬意を表して同じ取り皿に盛り付けて、食卓に並んで食べることになった。
いや、正確には彼女はテーブルの上に座るのである。
量の多少は仕方がない。
胃袋の大きさの差と塩分の摂取容量を考慮してるからである。
食卓を囲むと言っても、家族揃って和気あいあいに今日の出来事 、不満、冗談、明日の天気、隣の夫婦ゲンカの原因と話題豊富な雰囲気ではない。
ただ黙々と食べるだけである。
彼女が自分の分を食べ終えて、皿なめあげて足りなかったののだろう、ボクがちょ っとよそ見をしたスキにボクの皿の物に手を出した。
『コラ! 猫ババ、するな。』
って思わず手が出て、頭をコツンとこずいてしまった。
また、また、小学校の頃の記憶が蘇る。